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棚田学会
Rice Terrace Research Association

                  棚田学会賞 

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棚田学会賞
第13回石井進記念棚田学会賞(平成28年度)
1.授賞者
(1)坂元棚田保存会(宮崎県日南市酒谷甲)
(2)じょんのびグループ(千葉県松戸市小金原)
(3)平林活性化組合(山梨県南巨摩郡富士川町平林)

2.業績名及び授賞理由
(1)坂元棚田保存会
業績名:棚田を活かした国際交流
授賞理由:南国情緒豊かな海岸としてのイメージが強い宮崎県南部の日南市であるが、本地区は同市内を貫流する酒谷川の源流部を経て都城市へ向かう国道222号線を北に折れ、さらに2qほど奥地に入った山間部に位置している。本地区は昭和初期に地区共有の茅場の耕地整理が進み、当時の馬耕を前提として能率と利便性を考慮した傾斜地水田が昭和3〜8年に造成され、高さ2mを超える石積み法面の長方形区画の棚田が27段にわたり急峻な斜面に沿って整然と連なっている。
 その後、全国的に農業の機械化が急速に進み馬耕が姿を消したことから、本地区の棚田は当時の傾斜地水田農業の先進的な姿を伝える学術的にも価値の高い、生きているモニュメントとして貴重なものである。しかし、農林業をめぐる社会経済環境の変化により地区の過疎化と高齢化が進んだため、農閑期の棚田を地域おこしに活用しようと1994年に本地区18戸の52名が「れんげの里づくり推進協議会」を結成して活動を始めた。
 2002年から酒谷グリーンツーリズム協議会が坂元棚田オーナー制度をスタートさせ、毎年30組近くのオーナーが稲作を通じて地域の住民と交流するようになった。そして2008年に両協議会を一本化し坂元棚田保存会を新たに立ち上げて活動を強化し、2015年12月にはオーナー26組に宮崎大学の学生及び交換留学生約70名が加わり、恒例となっている同オーナー制度の収穫祭を挙行した。翌2016年12月にも同大学の留学生約60名を招いて収穫祭を開催し、動物由来の出汁や調味料、アルコールを使わないハラール料理を振る舞い、蕎麦打ちや餅つきも行って国際交流を深めた様子がUMKテレビ宮崎によって取材された。
 このように坂元棚田保存会及びその前身であるむらおこし関連協議会の長年にわたる活動は、地域おこしから始めて都市農村交流、さらには国際交流を通じた地域の活性化に大きく貢献しており、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致するものであり、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

(2)じょんのびグループ
業績名:映像による棚田保全・棚田知識普及の為の長年にわたる地道な活動
授賞理由:じょんのびグループの前身は、第1回全国棚田サミット翌年の1996年に有志が集まり活動を開始し、1999年の棚田学会設立以降は同学会の写真部を標榜して活動を進めて来た。学会主催の中国雲南省訪問の後に“元陽の感動をもう一度”を合言葉に、同部員が中心となり2006年に写文集「雲南省元陽県の棚田」を出版、これを契機として2008年に総会を開催して会則を定め、同グループを正式に結成しその後10年間にわたり活動を続けている。「じょんのび」は「ゆったりのんびり、真に気持ちよく」を意味する新潟県頚城地方の方言に由来する。現在の会員は14名で写真愛好家をはじめ、地理学、電気工学、デザイン学の専門家、大手電機、薬品、医療器メーカー、総合商社の社員、地方公務員、農業従事者など多岐にわたる経歴の持ち主で構成されており、同学会の多数の会員が随時活動に加わるなど協力を得ている。
 グループ員は海外を含め50数回の現地訪問などを重ね、趣味のカメラや絵筆を通じて棚田保全につながる棚田知識の集積につとめ、日本の原風景棚田記念切手30選を始めとする記念誌、雑誌、カレンダーへの写真素材の提供や投稿、様々なイベントでの棚田写真展、絵画展への素材提供や個人講演、新潟県佐渡や栃木県茂木でのビオトープ造り、個人による出版や棚田関連写真・絵画の個展の開催、グループ員相互の情報共有のための瓦版の発行などの活動を積極的に展開してきた。また、これらの活動の多くはマスコミ等に取り上げられ社会に情報発信されている。
 同グループはこれらの活動を通じ20数年間にわたって広く一般市民に棚田の景観、文化的価値、そして保存の重要性を訴え続け、結成10周年を迎えた今年は記念事業として「写真・絵画作品集」の出版を企画し、現在はその編集作業に取り組んでいる。
 このように、社会の共有財産ともいえる棚田の映像記録等の蓄積、公開を通じて啓蒙活動を続ける同グループの長年にわたるユニークな取り組みは、現代社会に大きなインパクトを与えてきており、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致するものであり、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

(3)平林活性化組合
業績名:富士山の見える棚田を守る 授賞理由:通称南アルプスと呼ばれる赤石山系巨摩山地の東麓に位置する当地は、高度経済成長期以降の人口流出に歯止めがかからず、過疎化、高齢化の進展、耕作放棄地の増加により地区住民は、「集落が小さくなってしまった」と感じていた。この危機感を背景に、少しでも地区の農地や景観を守り続けたいという思いから地域の活性化対策を旧増穂町(ますほちょう)に要望し、2002年に「平林体験農園交流施設みさき耕舎」を建設、平林地区の全戸125戸が参加して平林活性化組合を設立した。
 みさき大根の農園の体験事業を皮切りに、翌2003年には耕作放棄地の解消を目的として9区画、11グループの利用者260名で棚田オーナー制度をスタート、この取り組みは年々発展し、2016年時点では16区画、19グループ300名の参加を得て実施している。当初の利用者の募集は、平林地区内の「増穂登り窯」からの紹介により、東京都練馬区の農園経営者を通じて行った。
 2004年には旧増穂町から望む富士をテーマとした「富士山の見えるまちづくり」が「関東の富士見百景」に選定された。また、2006年には企業ボランティアを受け入れ農村の高齢者支援及び都市と農村の新たな交流を開始、2008年には東京都内の中学校の男子生徒200名のお田植え体験の受け入れを開始し、以後毎年実施して2016年には257名が参加した。
 地元の増穂西小学校の児童は棚田オーナー制度を利用してもち米を栽培し、収穫祭の開催やアフリカへの救援米を供出していたが、児童・生徒数の減少により2015年に閉校となった。一方、地区内の談輪会のメンバーが同組合で収穫した棚田米を使った米焼酎の製造に乗り出して棚田サポーターを募集、組合員による環境保全活動が地区の蛍を復活させ地域の交流に貢献している。
 このように同組合による持続的な取り組みは、山間部の厳しい条件のなか富士山をモチーフとした都市住民との積極的な交流により地域の活性化に貢献し、山岳地域の棚田保全団体の参考となるもので、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致するものであり、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

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